泌尿器科のいくつかの病気の症状と治療法等をご紹介します。
前立腺がん
近年食生活の変化などにより前立腺がんの患者さんは増加傾向にあります。
PSAという前立腺がんの腫瘍マーカーと超音波検査を組み合わせることにより調べます。
50歳以上の男性は年に一度チェックをお勧めいたします。
前立腺がんの疑いがある方には、針を用いた組織診断をお勧めいたします。
膀胱がん
症状のない血尿で発見されることが多く、痛みなどは病気が進行するまでなかなかでません。
早期であれば、お腹に傷をつけることなく治療ができますが、進行すると膀胱を摘出するだけでなく、根治がなかなか得られ難くなります。検診などで尿潜血を指摘された際なども、早めの受診をお勧めいたします。
腎がん
以前は血尿と疼痛と腫瘤が3大症状とされていました。しかし最近では、人間ドックなどで早期に発見されることが多く、根治が期待できる症例が増えて来ました。
腎盂・尿管がん
最も多い初発症状は痛みなどを伴わない血尿です。膀胱炎などでは排尿痛や頻尿、残尿感などの症状を伴って血尿がみられますが、これらの随伴症状がなければ尿路のがんを疑わなければなりません。検診などで尿潜血を指摘された際なども、早めの受診をお勧めいたします。
精巣がん
発生頻度は10万人に2~3人で、1~2歳と20~40歳にピークがあります。
また悪性リンパ腫の場合は中高年男性に生じることもあります。通常は痛みを伴わないで精巣が腫れてくることで発見されます。精巣がんは急速に増大、転移を起こすので、何より大事なことは、早期発見早期治療となります。受診しづらい部分ではありますが、恥ずかしがらずに異常を認めた際は早めに受診してください。
前立腺肥大症
30歳ごろより発症し、40歳ころより症状が出始めます。症状は、尿の回数が多い、残尿感がある、尿が出にくい、尿が間に合わない、尿が漏れるなど症状は多岐に渡ります。
治療には、内服加療と手術療法があります。
慢性腎不全
症状としては、体のだるさや、浮腫、血圧の上昇などがあります。原因としては、糖尿病、高血圧、腎炎、尿路結石など多岐に渡りますが、食事の影響が多いのが特徴です。
腎不全が悪化した際には、老廃物を体の外へ排泄できなくなり、人工透析や腎移植の必要性があります。
急性前立腺炎
前立腺炎は、急性の場合の多くは細菌による感染で、高熱(発熱)や排尿困難、排尿痛や残尿感,頻尿症状を伴います。点滴や内服による適切な抗菌薬治療を行わないと敗血症を併発し命に関わることがあります。
慢性前立腺炎
若い世代(特に30-50歳代)に多い前立腺の病気です。前立腺炎とは前立腺の中で炎症が生じた状態で、細菌が前立腺に付いて起きる「細菌性前立腺炎」と細菌がない「非細菌性前立腺炎」がありますが、非細菌性前立腺炎の方が多く見られます。
症状は、主に下腹部、会陰部(股間の奥)、陰茎の違和感など下半身の不快感を認めます。治療を基本的には、抗生剤処方と生薬になりますが、症状が強い場合には安定剤なども投薬します。
急性尿道炎
淋菌性、クラミジア性、非淋菌性非クラミジア性などの違いがありますが、抗菌薬内服で治療します。最近、抗菌薬が効きにくい淋菌が多く出現していますので、この場合は注射の抗菌薬も交えて治療します。
間質性膀胱炎
なかなか治らない膀胱痛、特に尿が溜まった時に痛くなるのは「間質性膀胱炎」という病態かもしれません。アレルギーが関与していると考えられていますが、詳しい病態はいまだわかっていません。しかし、きちんと検査・評価することで、治療可能な場合も多い疾患です。
過活動膀胱・尿失禁
「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」「急に立ち上がったり、笑ったり、咳をしたときに尿漏れをしてしまう」などの症状を示す病気です。男性女性を問わず非常に多くの方が罹患しているにも関わらず、羞恥心のため医療機関に受診をしている方が少ないのが実情です。当院では、処方による加療だけでなく、最新式の頻尿・尿失禁治療器を導入し、症状緩和だけでなく治すことを目標としております。
腎・尿管結石
腎臓でできた結石が細い尿管に落下し、急激に閉塞したために痛みがおこります。結石の大きさや位置によらず激痛となることがあり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。結石の診断がついたら、まず痛みを抑えることが大事です。10mm以下の結石では自然排石が期待できますが、それ以上の大きさでは手術が必要になることがあります。
ED
性交渉をするための十分な勃起が得られない場合や、勃起を維持できないために性交ができない状態を指します。日本では約500万人の患者さんがいると推測されています。内服治療が主体となり、最近では特に長時間作用型の新薬も登場し、良好な治療成績を認めております。
男性更年期障害(LOH症候群)
男性ホルモン(テストステロン)は精巣が産生するホルモンで、さまざまな機能をもっており、心身状態に影響を及ぼしています。個人差が大きいのですが、一般的に男性ホルモン産生は高齢になると低下し、とくに40代前半から60代後半に、性欲低下・発汗・ほてり・寝汗・疲労感・うつ状態等の症状を呈します。テストステロン投与を基本とし、漢方薬や安定剤などを併用し治療致します。
前立腺生検とは
血液検査(PSA)や画像検査によって前立腺癌が疑われた場合に、前立腺へ直接針を刺すことによって精密検査を行います。
PSA値と前立腺癌の見つかる確率
PSA4~10ng/ml未満:25~30%
PSA10ng/ml以上:50~80%
PSA100ng/ml以上:癌と転移が強く疑われる
当院での前立腺生検
当院では日帰り前立腺生検を行っております。
前立腺生検の方法には、経会陰式と経直腸式があります。当院では、合併症の少ない経会陰式を採用しております。
前立腺生検のながれ
1)点滴
2)砕石位(赤ちゃんを産む時の体位)をとります
3)超音波にて前立腺を観察
4)局所麻酔
5)針生検(約10分)
6)必要に応じて尿道カテーテル挿入(1日)
7)約1時間クリニックにて安静
8)ご帰宅
合併症
日帰り前立腺生検の特徴
・全身麻酔や下半身麻酔と違い、麻酔の合併症が少ない
・費用負担が少ない
・お仕事をしている方など、時間の調整をつけやすい など